腐ったものを食べると何時間後に食中毒になるのか?専門家がよくある質問にズバリお答えします!
腐った状態にある食品や食材には、食中毒を引き起こす病因物質が含まれている場合が多く、これらの物質を口にすると、下痢や腹痛、嘔吐、発熱など食中毒でよく見られる症状があらわれることがあります。
また、食中毒の症状や発症するまでの時間である「潜伏期間」は、食中毒を引き起こす病因物質や摂取量、体調によっても異なりますが、ノロウイルスの場合24時間から48時間が潜伏期間といわれています。
今回は、飲食店や食品加工などの事業者向けに、食中毒の病因物質ごとの潜伏期間をはじめ、原因や症状、予防策などを紹介します。また、当コラムは事業者だけではなく、一般家庭の食中毒対策でも十分応用できる内容になっています。ぜひご参考ください。
<ご注意>
食中毒(食あたり)は、腐ったものを口にしたことで起こるわけではなく、食中毒を引き起こすウイルスや菌などの「病因物質」を体内へ取り込んだことが原因で発症します。ただし、食品(または食材)が腐るのは適切な保管・管理を怠った結果であり、これは食中毒の病因物質を増殖させることにもつながることから、結果的に腐っているものの中には、食中毒の病因物質が存在している場合が多いことになります。
目次
- 食中毒(食あたり)の原因と発生件数について
- 食中毒の潜伏期間(何時間後に食中毒になるのか?)
- 「ウイルス」が原因で起きる食中毒(ノロウイルスなど)
- 「ノロウイルス」の特徴(潜伏期間など)
- 「細菌」が原因で起きる食中毒(カンピロバクターなど)
- 「カンピロバクター」の特徴(潜伏期間など)
- 「ウェルシュ菌」の特徴(潜伏期間など)
- 「サルモネラ属菌」の特徴(潜伏期間など)
- 「腸管出血性大腸菌」の特徴(潜伏期間など)
- 「黄色ブドウ球菌」の特徴(潜伏期間など)
- 「寄生虫」が原因で起きる食中毒(アニサキスなど)
- 「アニサキス」の特徴(潜伏期間など)
- 「クドア」の特徴(潜伏期間など)
- 「自然毒」が原因で起きる食中毒(植物性自然毒と動物性自然毒)
- 「化学物質」が原因で起きる食中毒(ヒスタミンなど)
- 「ヒスタミン」の特徴(潜伏期間など)
- その他、様々な食中毒の病因物質(腸炎ビブリオなど)
- 「腸炎ビブリオ」の特徴(潜伏期間など)
- 「ボツリヌス菌」の特徴(潜伏期間など)
- 「セレウス菌」の特徴(潜伏期間など)
- 「リステリア・モノサイトゲネス」の特徴(潜伏期間など)
- 事業者が心がける「食中毒の予防で大切なこと」
- まとめ
食中毒(食あたり)の原因と発生件数について
食中毒を引き起こす病因物質は大きく「ウイルス」「細菌」「寄生虫」「自然毒」「化学物質」に分類され、それぞれの症状や潜伏期間、予防策も異なります。このような区分を認識することは、適切な予防や対処法には極めて重要です。
ウイルス性の食中毒は、全体の患者数の中で最も高い割合を占めており58.7%に上ります。これに続くのが細菌によるもので、その割合は30.7%です。また、寄生虫による食中毒は7.3%、自然毒によるものが1.0%、そして化学物質による食中毒が0.8%と続きます※。
※「令和5年11月時点の食中毒発生事例(速報値・厚生労働省)」より集計
ちなみに、「食あたり」という言葉も食中毒と同じ意味で使われることがあります。この用語は、一般的には食品による軽度の消化不良や軽い症状を指すことが多いようですが、厳密には食中毒と同じ意味となります。
食中毒の潜伏期間(何時間後に食中毒になるのか?)
食中毒を引き起こす主な病因物質とその潜伏期間は概ね以下の通りです。
- ノロウイルス(ウイルス)…24時間~48時間
- カンピロバクター(細菌)…1日~7日間
- ウェルシュ菌(細菌)…6時間~18時間
- サルモネラ属菌(細菌)…6時間~72時間
- 腸管出血性大腸菌(細菌)…3日~8日間
- 黄色ブドウ球菌(細菌)…1時間~5時間 30分~6時間(東京都)
- アニサキス(寄生虫)…2時間~8時間 数時間~十数時間(東京都)
- クドア・セプテンプンクタータ(寄生虫)…数時間
- ツキヨタケ(植物性自然毒/毒キノコ)…30分~1時間
- クサラウベタケ(植物性自然毒/毒キノコ)…20分~1時間10分~数時間(食品安全委員会)
- フグ毒(動物性自然毒)…20分から3時間
- 貝毒(動物性自然毒)…下痢性:30分~4時間、麻痺性:30分程度(厚生労働省)
- ヒスタミン(化学物質)…数分~1時間(広島市)
- 腸炎ビブリオ(細菌)…8~24時間
- ボツリヌス菌(細菌)…8~36時間
- セレウス菌(細菌)…下痢型:8分~16時間、おう吐型:30分~6時間。
- リステリア・モノサイトゲネス(細菌)…24時間~3ヶ月程度
これらの潜伏期間を理解することは、食中毒の原因を特定し、適切な予防と対処法をとるために必要です。特に飲食店や食品加工工場などの事業者は、これらの知識をもとにした衛生管理が求められます。
「ウイルス」が原因で起きる食中毒(ノロウイルスなど)
ウイルスが原因で起こる食中毒には、「ノロウイルス」「サポウイルス」「A型肝炎ウイルス」「E型肝炎ウイルス」などが挙げられます。これらのウイルスは、飲食物を介して人から人へと広がることがあり、食中毒の大きな原因となります。特に、ノロウイルスによる食中毒はウイルス性食中毒の中でも圧倒的に多いことで知られています。
厚生労働省の令和5年11月時点の報告(速報値)によると、ウイルスによる食中毒患者3,942名のうち、99%にあたる3,914名がノロウイルスによるものであると報告されています。
「ノロウイルス」の特徴(潜伏期間など)
「ノロウイルス」は食中毒を引き起こす代表的なウイルスのひとつで、以下の特徴があります。
潜伏期間…24時間~48時間。
症状…吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、発熱など。
回復期間…通常3日以内。軽快しても1週間~1カ月程度ウイルスの排泄が続くことあり。
流行期…冬場に多い。
原因食品…水やノロウイルスに汚染された食品。特にカキを含む「二枚貝」の報告が多い。
ノロウイルスは貝の体内で増殖できないため、貝の生息域がノロウイルスに汚染されると体内に蓄積してしまいます。また、感染者の便やおう吐物に接触することで二次感染を起こすこともあります。
ノロウイルスによる食中毒は、特に集団生活施設や飲食店など、多くの人が利用する場所での発生に注意が必要です。ノロウイルスは微量でも感染を引き起こす可能性があるため、食品の取り扱いや個人の衛生管理には細心の注意を払います。
特に冬場はノロウイルスの感染リスクが高まるため、食品の加熱調理や手洗い、食品の保管方法に注意しましょう。
「ノロウイルス」の予防策.1「基本対策」
ノロウイルスによる食中毒を予防するための基本対策を以下にまとめました。
- カキなどの二枚貝は中心部まで十分に加熱する(85℃~90℃で90秒間以上)。
- 野菜や果物などの生鮮食品は十分に洗浄する。
- 調理の前、食事の前、またトイレの後には正しい手順でしっかり手洗いする。
- 手洗い後のタオルは常に清潔にしておく。
「ノロウイルス」の予防策.2「調理従事者の衛生管理」
食中毒、特にノロウイルスによるものは、感染した調理従事者を介して食品が汚染されるケースに注意が必要です。そのため、調理従事者の体調管理が予防策の重要なポイントになります。
以下は、特にノロウイルスの流行を防ぐための調理従事者の衛生管理に関する推奨事項です(新宿区ホームページより引用)。
- ノロウイルス流行期には、十分に加熱された食品を摂取する等により感染防止に努め、徹底した手洗いを励行するなど体調に留意すること。
- 調理従事者等は、毎日作業開始前に、自らの健康状態を衛生管理者に報告し、衛生管理者はその結果を記録すること。
- 調理従事者等は臨時職員も含め、定期的な健康診断および月1回以上の検便を受けること。
- 調理従事者等は下痢、嘔吐、発熱などの症状があった時は調理作業に従事しないこと。また、症状がない場合でも、検便検査が陽性であった場合には、再検査等によりノロウイルスを保有していないことが確認されるまでの間、食品に直接触れる調理作業を控えるなど適切な措置をとること。
- 調理従事者等が着用する帽子、外衣は毎日専用で清潔なものに交換すること。
- 便所には、調理作業時に着用する外衣、帽子、履き物のまま入らないこと。
- 調理従事者等は当該施設で調理された食品を喫食しない、または、試食担当者を限定すること。
「ノロウイルス」の予防策.3「保育園や学校」
保育園や学校などの施設では、ノロウイルスによる食中毒が発生すると集団発生リスクが高まります。そのため、基本対策に加えて、発生した場合の「二次感染防止策」に備えることが不可欠です。
二次感染を防ぐため、例えば、乾燥したノロウイルスが空気中へ舞い上がることを防ぐ対策が必要です。おう吐物を拭き取ったぞうきんなどをビニール袋に入れて消毒し、口を固く結びます。
このような二次感染防止用の対応マニュアルを各施設で用意し、必要な道具を常備しておくことが大切になります。
これらの措置は、ノロウイルスによる食中毒の発生時に迅速かつ効果的に対処するために必要なものです。特に保育園や学校のような抵抗力の低い子どもたちが多く集まる場所では、感染の広がりを最小限に抑えることが求められます。
また、これらの施設では手洗いの徹底や衛生教育の強化も有効な予防策となります。こうした予防対策を通じて、子どもたちの健康と安全を守りましょう。
「細菌」が原因で起きる食中毒(カンピロバクターなど)
細菌が原因で起こる食中毒には、多くの種類がありますが、特に「カンピロバクター」「ウェルシュ菌」「サルモネラ属菌」「腸管出血性大腸菌」「黄色ブドウ球菌」などが主な原因として知られています。これらの細菌は、様々な食品を介して人体に入り、食中毒を引き起こすことがあります。
厚生労働省の令和5年11月時点の報告(速報値)によると、細菌による食中毒患者のうち、98%(2,020名)が上記の5つの細菌によるものとされています。この統計は、食中毒の原因となる主な細菌を示していることから、これらに対する適切な予防策が求められます。
「カンピロバクター」の特徴(潜伏期間など)
カンピロバクターは食中毒の原因となる細菌のひとつで、以下の特徴を持っています。
潜伏期間…1日~7日間。
症状…腹痛、下痢、発熱、吐き気など。
回復期間…3日~6日間。
カンピロバクターは、鶏、豚、牛、ペット、野鳥などの動物の「消化管内」に広く生息しており、これらの動物が原因で食中毒が発生することがあります。特に、肉の生食、特に鶏肉が原因食材として報告されている例が多く、加熱不十分な肉による食中毒も同様に報告されています。
また、カンピロバクターは、ごく少量の菌でも食中毒症状を発症する可能性があります。鶏肉などに付着していたカンピロバクターが調理器具などを介して、他の食品に付着(二次汚染)し、それを食べたことで食中毒を発症した事例も報告されています。
「カンピロバクタ―」の予防策
カンピロバクターによる食中毒を予防するための具体的な対策は以下の通りです。
- 加熱不十分な食肉や臓器、または食肉などの生食を避ける。カンピロバクターは適切な加熱によって殺菌できます。
- 生野菜などへの二次汚染を防ぐため、生肉などを切った包丁などの調理器具は使用後に洗浄します。これにより、他の食品への細菌の移行を防ぎます。
- カンピロバクターは熱と乾燥に弱いため、調理器具などの熱湯消毒や洗浄後の乾燥を心がけます。
- 生肉を取り扱った後は十分に手指を洗浄します。手洗いは食中毒の予防における最も基本的かつ効果的な方法です。
- 相互汚染を防止するため、生肉は専用の蓋付きの容器に入れるかラップをかけます。これにより、冷蔵庫内での他の食品との接触を防ぐことができます。
- 生肉を取り扱う調理台と完成した料理を置く調理台を離して設置します。これにより、調理中の交差汚染を防ぐことができます。
- 盛りつけ作業には、使い捨て手袋を使用します。これにより、手指からの感染を防ぐことができます。
「ウェルシュ菌」の特徴(潜伏期間など)
ウェルシュ菌は、特定の環境で食中毒を引き起こす細菌です。以下はその特徴です。
潜伏期間…6時間~18時間。
症状…主に腹痛、下痢など。
回復期間…1日~2日間。
ウェルシュ菌は人や動物の腸管、土壌、水中など自然界に広く生息しています。また、この細菌は熱に強い特性を持ち、高温でも容易には死滅しません。このため、料理を十分に加熱しても菌が生き残る可能性があります。
特に、カレー、シチュー、スープなどの煮込み料理を前日に大量につくって保存している飲食店や給食施設でのウェルシュ菌による食中毒の発生例が多く報告されています。
「ウェルシュ菌」の予防策
ウェルシュ菌による食中毒を予防するためには、特に食品の調理と保管において注意が必要です。
- 前日の調理は避け、加熱調理したものはなるべく早く食べましょう。ウェルシュ菌は加熱後の温度帯で増殖しやすいため、長時間の保管は避けるようにします。
- 一度に大量の食品を加熱調理したときは、菌の発育しやすい温度を長く保たないように注意します。料理を温かい状態で長時間放置することは避け、迅速に消費するか、適切に冷却して保存することが重要です。
- やむをえず保管するときは、小分けにしてから急激に冷却します。この方法により、食品内でのウェルシュ菌の増殖を抑制します。
「サルモネラ属菌」の特徴(潜伏期間など)
サルモネラ属菌は、以下の特徴を持っています。
潜伏期間…6時間~72時間。
症状…腹痛、下痢、おう吐、発熱など。
回復期間…2日~7日間。
サルモネラ属菌は、鶏、豚、牛などの動物の腸管に加え、河川や下水など自然界にも広く生息しています。
非加熱の肉や魚類に加え、非加熱(半熟を含む)の鶏卵でつくられたオムレツや玉子焼き、自家製マヨネーズなども原因食品として報告されています。これらの食品は、加熱処理が不十分な場合にサルモネラ属菌が残ることで食中毒を引き起こす原因となります。
「サルモネラ菌」の予防策
サルモネラ菌による食中毒を予防するためには、特に肉類や鶏卵の取り扱いに注意が必要です。
- 肉類を調理する際は、食品の中心部まで火が通るように加熱します。これにより、サルモネラ菌を含む細菌の殺菌が可能です。
- 卵は新鮮なものを使い、購入後は冷蔵保管します。新鮮で清潔な卵の使用は、サルモネラ菌による感染のリスクを減らします。
- 特にヒビが入っているものや賞味期限を過ぎたものは生食を避けます。これらの卵はサルモネラ菌の感染源になりやすいです。
- 卵は料理に使う分だけ、直前に割ってすぐに調理します。これにより、卵に残る細菌の増殖を抑制します。
- 二次感染を防止するため、食肉や卵などを触った手指や調理器具は十分に洗浄・消毒します。これにより、他の食品への細菌の移行を防ぎます。
「腸管出血性大腸菌」の特徴(潜伏期間など)
腸管出血性大腸菌は、以下のような特徴を持っています。
潜伏期間…3日~8日間。
症状…激しい腹痛、大量の血液をともなう下痢など。
※症状があらわれてから数日から2週間以内に「溶血性尿毒症症候群(HUS)」を発症することがあります。これは重症の合併症で注意が必要です。
腸管出血性大腸菌の中でも「O157」は広く知られていますが、その他にも「O26」や「O111」などの型が存在します。これらの菌は「VT1」「VT2」という2種類、あるいはいずれか1種類のベロ毒素を生成する大腸菌で、出血性の大腸炎を引き起こします。
感染しても健康な成人では無症状であったり、単なる下痢で終わることもあります。ただし、小児や基礎疾患を持つ高齢者などは症状が出やすく、「溶血性尿毒症症候群(HUS)」を引き起こす可能性があるため、老健施設などの事業者は特に注意が必要です。
「腸管出血性大腸菌」の予防策
腸管出血性大腸菌による食中毒を予防するためには、日常の食品の取り扱いに注意するとともに衛生意識を高めます。
- 生野菜などはよく洗い、食肉は中心部まで十分加熱してから食べます。これにより、細菌の残存を防ぎます。
- 冷蔵庫内の食品は早めに食べ、細菌の増殖を防ぎます。
- 加熱調理済の食品が二次汚染しないよう調理器具は十分に洗い、できれば熱湯または塩素系消毒剤で消毒します。これにより、他の食品への細菌の移行を防ぎます。
- 調理や食事の前には必ず石けんで手を洗います。細菌の手からの感染を防ぐ基本的な衛生習慣です。
- 水道管直結以外の水を飲用あるいは調理に使用する場合は、必ず年1回以上の水質検査を受け、飲用に適しているか否かを確認します。これにより、水源からの感染リスクを減らすことができます。
- ビルなどの貯水槽の清掃・点検を定期的に行うことで水の安全性を保ちます。
- お腹が痛く下痢が続いたら医師の診察を受けるなど、早期の診断と治療が重要です。
- 便に汚染された下着などの取扱いに注意します。普段からの個人の衛生意識が重要です。
「黄色ブドウ球菌」の特徴(潜伏期間など)
黄色ブドウ球菌は、以下の特徴を持っています。
潜伏期間…1時間~5時間。
症状…激しいおう吐、腹痛など。
回復期間…1日~2日間。
黄色ブドウ球菌は手指の傷口、のど、鼻腔内などに生息しており、手指から食品への汚染例が多い細菌です。食品内で菌が増殖する際に食中毒の原因となる「エンテロトキシン」という毒素を生成します。そのため、黄色ブドウ球菌が付着した手でつくったおにぎりやサンドイッチなどが代表的な原因食品とされています。
また、この毒素は熱に強く、100℃で30分の加熱でも死滅しないため、加熱した食品でも食中毒を起こすことがあります。
「黄色ブドウ球菌」の予防策
黄色ブドウ球菌による食中毒を予防するためには、個人の衛生意識と食品の保存方法に注意が必要です。
- 手指の洗浄や消毒を十分に行い、食品への細菌の移行を防ぎます。手洗いは食中毒予防の基本です。
- 手指に切り傷や化膿巣のある場合は、使い捨て手袋などを使い直接食品を触らないようにし、傷口からの感染を防ぎます。
- 食品は冷蔵庫などで10℃以下に保存し、菌が増えるのを防ぎます。適切な温度での保存は、細菌の増殖を抑制します。
「寄生虫」が原因で起きる食中毒(アニサキスなど)
寄生虫が原因で起こる食中毒には、「アニサキス」「クドア・セプテンプンクタータ:以下クドア」などがあります。
厚生労働省の令和5年11月時点の報告(速報値)によると、寄生虫が原因による食中毒患者のうち、65%(316人)がアニサキス、34%(168人)がクドアによるもので、この2つでほぼ原因が占められています。
「アニサキス」の特徴(潜伏期間など)
アニサキスは、魚介類を介して人間に感染する寄生虫で、以下の特徴があります。
潜伏期間…2時間~8時間。
症状…激しい腹痛、吐き気など。稀に吐血することもある。
アニサキスはクジラやイルカなどの消化管に寄生して卵を産み、その卵がオキアミなどの体内で幼虫になって、魚などに食べられて内臓や筋肉中に幼虫(2~3cm)として寄生します。特にサケやサバ、カツオ、タラ、イカなどの刺身を食べることで感染し、胃壁や腸壁に侵入します。
アニサキスが胃壁などに侵入しない場合でも、アニサキスが抗原となってアレルギーを起こすことがあります。国立感染症研究所の推計によると、年間約7,300件のアニサキス食中毒が発生しています。
治療に関しては、内視鏡による摘出以外に治療法はないため予防が重要です。特に、生食用の魚介類の選択と取り扱いに注意します。
「アニサキス」の予防策
アニサキスによる食中毒を予防するためには、以下のような対策が効果的です。
- 加熱調理する(70℃以上か、60℃を1分以上)ことにより、アニサキスを死滅させることができます。
- 加熱または冷凍をしない場合は、明るい場所で魚をよく見てアニサキスを除去します。目視での確認と除去は、生食する際の重要な予防策です。
- 内臓にはアニサキスが存在する可能性が高いため生で食べないようにします。
- 魚介類を生食する際は、新鮮なものを選び、早期に内臓を除去して低温(4℃以下)で保存します。
- マイナス20℃で24時間以上、中心部まで凍結すると死滅します。また、購入時に冷凍を選択する方法もあります。
- シメサバをつくる場合、塩じめ工程でマイナス20℃で24時間以上、中心部まで凍らせます。
「クドア」の特徴(潜伏期間など)
クドアは、ヒラメを介して人間に感染する可能性がある寄生虫で、以下のような特徴があります。
潜伏期間…数時間。
症状…おう吐や下痢などで、比較的軽症。
回復期間…速やかな回復が見込める。
近年、クドアはヒラメに寄生することが分かり、ヒラメが原因食材に特定されています。農林水産省および水産庁では、食中毒防止策として、ヒラメの養殖場での適切な管理によりクドアがヒラメに寄生することを防止する取り組みを行っています。
「クドア」の予防策
クドアによる食中毒を予防するためには以下の予防策を実施します。
- マイナス20℃で4時間以上冷凍することで、クドアを死滅させることができます。
- 75℃で5分以上加熱することでも、死滅させることができます。
「自然毒」が原因で起きる食中毒(植物性自然毒と動物性自然毒)
自然毒が原因で起きる食中毒は、主に「植物性自然毒」と「動物性自然毒」に分類されます。これらは自然界に存在する毒物質です。
厚生労働省の令和5年11月時点の報告(速報値)によると、自然毒による食中毒患者のうち、植物性自然毒によるケースが90%以上(60人)を占めています。これは、誤って有毒な植物を摂取した結果と見られます。
自然毒は、ウイルスや細菌に比べると患者数は少ないものの、フグやキノコのように致命率が高いものが含まれるため、食品衛生上は非常に重要です。
「植物性自然毒」とは
植物性自然毒は、「有毒植物」と「毒キノコ」に分類されます。
有毒植物による食中毒は、山菜取りなどで誤って採取したことによるケースが多く報告されています。また、庭や公園など身近な場所で採取した有毒植物を誤って食べるケースもあります。
食用と確実に判断できない有害植物やキノコは、絶対に「採らない」「食べない」「売らない」「人にあげない」を心がけましょう。
(1)代表的な有毒植物とその症状
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クワズイモ
里芋に間違えて食べるケースがあり、悪心、おう吐、下痢、麻痺、皮膚炎などの症状があらわれる。 -
スイセン
ニラやノビルと間違えて食べるケースがあり、悪心、おう吐、下痢、昏睡などの症状があらわれる。 -
ジャガイモ
発芽しなかったジャガイモや光に当たって黄緑色になったジャガイモの表面、ジャガイモの芽の付け根には有毒成分「ソラニン」や「チャコニン」が含まれることがあり、おう吐、下痢、腹痛、めまい、動悸などの症状があらわれる。
(2)代表的な毒キノコとその症状
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ツキヨタケ
食用のヒラタケ、ムキタケ、シイタケに似ている。食後30分~1時間程度で嘔吐、下痢、腹痛などの症状があらわれる。 -
クサラウベタケ
食用のウラベニホテイシメジ、ホンシメジ、ハタケシメジに似ている。食後20分~1時間程度で嘔吐、下痢、腹痛などの症状があらわれる。
これらの植物性自然毒を避けるためには、植物やキノコの種類を正確に識別する知識が必要です。特に、野生のキノコや山菜を採取する際は、専門家のアドバイスを求めるか、安全性が確認されたものだけを摂取することが重要です。
「動物性自然毒」の特徴
動物性自然毒は、特定の海洋生物に含まれる毒素で、食中毒の原因になることがあります。主な原因となるものには「フグ毒」「貝毒」「毒魚」があります。
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フグ毒
フグには猛毒のフグ毒「テトロドトキシン」を持つものがあり、青酸カリの1,000倍以上の毒性といわれています。食後20分から3時間程度で、しびれや麻痺症状などが起き、死に至ることもあります。フグは有毒部分を除去することで食用にできるものもありますが、専門的な知識と技術が必要です。 -
毒貝
アサリやホタテなどの二枚貝は、エサのプランクトンが原因で毒を持つことがあります。食後30分程度(下痢性:30分~4時間、麻痺性:30分程度)で、下痢やおう吐などの症状があらわれることがあります。3日以内で症状が回復することもありますが、重症の場合は死に至ることもあります。また、一般的な調理加熱では毒素は分解できません。
毒化した貝は出荷規制されて市販されることはありませんが、潮干狩りや海水浴などで採った貝には注意が必要です。 -
毒魚
以下の魚は食品衛生法で食用禁止とされている代表的な魚であり、通常、これらの魚は漁港、市場などで発見され次第廃棄されます。
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ドクカマス(食用禁止魚第1号)
温度感覚異常、筋肉痛、関節痛、下痢、嘔吐などの症状があらわれます。 -
イシナギ(食用禁止魚第2号):肝臓を除去すれば販売可能
嘔吐、頭痛、皮膚のはく離などの症状があらわれます。 -
バラムツ(食用禁止魚第3号)
主に下痢などの症状があらわれます。 -
アブラソコムツ(食用禁止魚第4号)
主に下痢などの症状があらわれます。
これらの動物性自然毒は、非常に危険であり、誤って摂取すると重篤な健康被害を引き起こす可能性があります。特にフグや一部の二枚貝、食用禁止の魚類には注意が必要で、これらを取り扱う際には、適切な知識と技術が求められます。また、自然採取した魚介類を食す際には、その種類と安全性を正しく識別することが重要です。
「化学物質」が原因で起きる食中毒(ヒスタミンなど)
化学物質による食中毒は、比較的稀ですが、特定の条件下で発生する可能性があります。厚生労働省の令和5年11月時点の報告(速報値)によると、化学物質が原因による食中毒患者は全体の0.8%(51人)となっています。
ヒスタミンによる食中毒は、化学物質による食中毒としては最も一般的な事例で、食物アレルギーに似た症状があらわれることから「アレルギー様食中毒」とも呼ばれています。
ヒスタミンは特に魚介類の保存状態が悪い場合に高濃度で蓄積されることがあります。ヒスタミンが高濃度に蓄積した食品であっても、味や臭いに違和感がないことが多く、特に注意が必要です。
「ヒスタミン」の特徴(潜伏期間など)
ヒスタミンは化学物質による食中毒のひとつで、以下のような特徴を持っています。
潜伏期間…数分~1時間。
症状…悪心、嘔吐、下痢、腹痛、頭痛、舌や顔面の腫れ、じんましんなど。
回復期間…6時間~10時間。
ヒスタミンは魚肉中に含まれるアミノ酸「ヒスチジン」が、海中に生存している酵素によりヒスタミンに生成され、食品中に蓄積します。
特にマグロ、サンマ、カツオ、アジ、サバ、イワシ、ブリ、シイラ、カジキなどの生魚や、加工食品(一夜干し、干物、照焼き、蒲焼きなど)が代表的な原因食品です。
重要なことは、ヒスタミンは熱に強く、通常の加熱では分解されないという点です。そのため、加熱調理してもヒスタミンによる食中毒を防ぐことはできません。魚介類の新鮮さを保つための適切な保存方法と早期消費が、ヒスタミンによる食中毒を予防する鍵となります。
国内では、保育園や学校での発生事例や、ヒスタミンが高濃度で検出された魚の缶詰の回収事例が報告されています。
「ヒスタミン」の予防策
ヒスタミンによる食中毒を予防するためには、特に魚介類の取り扱いと保存方法に注意が必要です。
- 生魚は冷蔵または冷凍で保存します。
- 生魚は冷凍と解凍を繰り返さないようにします。繰り返しの冷凍・解凍は品質の低下を招き、ヒスタミン生成のリスクを増加させる可能性があります。
- 古くなった生魚は食べないようにする。
その他、様々な食中毒の病因物質(腸炎ビブリオなど)
これまでに一般的な食中毒の発生原因となる物質を紹介してきました。
次に、発生件数はそれほど多くはありませんが、よく耳にする食中毒の病因物質とそれらの潜伏期間について紹介します。
「腸炎ビブリオ」の特徴(潜伏期間など)
腸炎ビブリオは、特定の環境下で発生し、食中毒を引き起こす病因物質のひとつになります。
潜伏期間…8~24時間。
症状…主に腹痛、下痢など。また、発熱、吐き気、おう吐を起こす場合もある。
回復期間…2日~5日間。
腸炎ビブリオは沿岸の海水や海泥に存在する菌で、水温が15℃以上になると活発になるため、5月、6月から次第に増加し、夏場に食中毒が多く発生する傾向があります。魚介類の刺身やすし類が代表的な原因食品ですが、調理器具や手指などを介して二次汚染された食品からも食中毒が発生することがあります。
「腸炎ビブリオ」の予防策
以下の予防策を実施することで、腸炎ビブリオによる食中毒のリスクを減らすことができます。
- 魚介類は、調理前に流水(水道水)で良く洗って菌を洗い流します。これにより、表面に付着している菌を減らすことができます。
- 魚介類に使った調理器具類は洗浄・消毒して二次汚染を防ぎます。これにより、他の食品への菌の移行を防ぎます。
- 魚介類を調理したままのまな板で、野菜などを切らないようにし(まな板を使い分け)、交差汚染のリスクを減らします。
- 夏季の魚介類の生食は十分注意し、わずかな時間でも冷蔵庫でできれば4℃以下に保存します。これにより、菌の増殖を抑制します。
- 冷凍食品を解凍する際は専用の解凍庫や冷蔵庫内で行います。これにより、適切な温度で安全に解凍することができます。
- 加熱調理する場合は中心部まで充分に加熱し(60℃で10分以上)、菌を死滅させます。
これらの予防策は、特に夏季において重要であり、魚介類を取り扱う事業者はこれらの対策を徹底することが求められます。
「ボツリヌス菌」の特徴(潜伏期間など)
ボツリヌス菌は、極めて危険な食中毒の病因物質です。
潜伏期間…8時間~36時間。
症状…主に吐き気、おう吐、視力障害、言語障害など。
回復期間…症状が1か月以上続き、回復にはリハビリを含めて1年程度かかることもある。
ボツリヌス菌が食品中で増えた際に生成される「ボツリヌス毒素」を食品とともに摂取することで発症します。無酸素状態になっている食品が原因となりやすく、ビン詰や缶詰などを原因食品とした食中毒が発生しています。
「ボツリヌス菌」の予防策
ボツリヌス菌は土壌に広く生息しており、食品への汚染を完全に防ぐことは困難です。そのため、予防では食品中での菌の増殖を抑えることが重要なポイントとなります。
- レトルト食品や大部分の缶詰は適切な加熱が行われているため、常温保存が可能ですが、これと似たような形態の食品も流通しています。「食品を気密性のある容器に入れ、密封した後、加圧加熱殺菌」という表示の無い食品、あるいは「要冷蔵」「10℃以下で保存してください」などの表示がある場合は、必ず冷蔵保存して期限内に消費することが推奨されます。
- 真空パックや缶詰が膨張していたり、食品に異臭(酪酸臭)がある場合には、その食品を食べないようにします。これらの兆候は、ボツリヌス菌の増殖を示唆している可能性があります。
- 乳児ボツリヌス症の予防のため、1歳未満の乳児には、ボツリヌス菌に汚染される可能性のあるはちみつなどの食品を食べさせないようにします。
これらの予防策は、特に夏季において重要であり、魚介類を取り扱う事業者はこれらの対策を徹底することが求められます。
「セレウス菌」の特徴(潜伏期間など)
セレウス菌は、土壌、水、ほこりなどの自然環境や農畜水産物などに幅広く生息している細菌です。この菌による食中毒は「下痢型」と「おう吐型」の2つのタイプに分類され、それぞれの潜伏期間や症状が異なります。ただ、ほとんどのケースでは一両日中に回復します。
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下痢型セレウス菌
潜伏期間…8時間~16時間。
症状…主に腹痛、下痢など。
主な原因食品…弁当やプリンなど。 -
おう吐型セレウス菌
潜伏期間…30分~6時間。
症状…吐き気、おう吐など。
主な原因食品…焼飯、ピラフ、焼きそば、スパゲッティなど。
「セレウス菌」の予防策
セレウス菌による食中毒を予防するためには、特に穀類やめん類などの取り扱いに注意が必要です。以下の予防策を実施することで、セレウス菌による食中毒のリスクを減らすことができます。
- 一度に大量の米飯やめん類を調理し、つくり置きしないことが重要です。これらの食品はセレウス菌の増殖に適した環境になってしまいます。
- 穀類などが原料の食品は、調理後に保温庫で保温するか、小分けにして速やかに8℃以下で低温保存します。これにより、セレウス菌の増殖を抑えます。
「リステリア・モノサイトゲネス」の特徴(潜伏期間など)
リステリア・モノサイトゲネスは、様々な動物や環境に広く存在し、多くの食品を通じて感染する可能性がある細菌です。
潜伏期間…24時間~3ヶ月程度。
症状…軽度の場合は風邪のような症状を示します。
※ただし、妊婦(胎児)、新生児、乳幼児、高齢者、または基礎疾患を持つ人の場合、髄膜炎や敗血症などを起こし重症化することがある。
回復期間…通常は初期段階で回復します。
リステリア・モノサイトゲネスは家畜や野生動物、魚類など様々な動物に加え、河川水や下水、飼料など多様な環境に生息しています。特に、生ハムなどの食肉加工品、未殺菌乳、ナチュラルチーズなどの乳製品(加熱をせずに製造されるもの)、スモークサーモンなどの魚介類加工品が汚染される可能性が高いため、これらの食品を扱う際には特に注意が必要です。
「リステリア・モノサイトゲネス」の予防策
リステリア・モノサイトゲネスによる食中毒を予防するためには、特に食品の取り扱いと保存方法に注意が必要です。
- 生野菜や果物などは食べる前によく洗います。表面に付着している菌を減らすことができます。
- 食品は期限内に食べるようにします。特に、加工食品やパッケージ食品の消費期限や賞味期限に注意してください。
- 開封後は、期限に関わらず速やかに消費します。開封後の食品は微生物の増殖が早くなる可能性があるため、速やかに消費します。
- 冷蔵庫を清潔にし、適切な温度で保存します。冷蔵庫内でも微生物は増殖する可能性があるため過信は禁物です。
- 加熱してから食べます。加熱はリステリア菌を死滅させる最も確実な方法です。
事業者が心がける「食中毒の予防で大切なこと」
食品を取り扱う事業者が食中毒の予防対策を行う際は、効果的且つ網羅的な衛生管理の実現を目指します。このためには、「食中毒予防の3原則」を意識し、従業員の衛生管理への意識を高めることが最も大切です。
食中毒の予防で大切なこと1.「食中毒予防の3原則を守る」
食中毒を予防するためには、細菌やウイルスが食品に付着し、体内へ侵入することを防ぐことが大切です。これを達成するため「食中毒予防の3原則」を心がけます。
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食中毒予防の3原則「つけない」
「つけない」とは、手指や調理器具、汚染された食品から食中毒の原因物質やウイルスを食べ物に付けないようにすることです。
基本は徹底した手洗いです。特に、ノロウイルスのように少量でも感染を広げる可能性があるウイルスに対しては、従業員が正しい方法で手洗いを徹底することが重要です。
また、包丁やまな板などの調理器具の洗浄・消毒によって交差汚染や二次汚染を防ぐことも重要です。 -
食中毒予防の3原則「増やさない」
「増やさない」とは、食材の保存時に食中毒の原因物質を増殖させないようにすることです。食品や食材は、冷蔵庫や冷凍庫などを使って適切に保存します。 -
食中毒予防の3原則「やっつける」とは
「やっつける」とは、食品や食材の加熱処理で菌を死滅させることです。
例えば、ノロウイルスは熱に弱いため、食品の中心までしっかり熱が通るように、中心温度を85~90度以上にし、90秒間以上加熱することが大切です。
また、飲食店などで新たなメニューを考案する際は、調理時の中心温度を意識して開発するようにします。
これらの原則を守ることにより、食中毒のリスクを大幅に減らすことができます。従業員ひとりひとりの意識と行動が、食中毒予防においては非常に大切なのです。
食中毒の予防で大切なこと2.「衛生管理意識を高める」
食中毒の予防において、従業員の衛生管理意識を高めることは非常に重要です。
特にノロウイルスのように、食品取扱者を介して食品が汚染されるケースでは、従業員の衛生に対する意識と行動が食中毒予防の鍵となります。
そこで、従業員が普段から実践すべき衛生管理対策を紹介します。
- 下痢や嘔吐などの症状を確認し、確認した場合は業務に従事しません。これにより、感染の拡散を防ぐことができます。
- 手指のケガや傷を確認し、確認した場合は手袋などを着用します。これにより食品への細菌の移行を防ぎます。
- 常に清潔な作業着を着用します。レンタルユニフォームを利用して衛生管理を委託することもひとつの方法です。
- 菌が繁殖しやすい腕時計や指輪などの貴金属は着用しません。
- 正しい手洗いを徹底します。手洗いは食中毒予防の最も基本的で効果的な方法のひとつです。
食中毒の予防で大切なこと3.「リスクを見える化する」
食中毒の予防では、購入した食材の鮮度チェックや正しい保存方法など、様々な衛生管理に努めることが重要です。ただし、これらの努力を最大限に活かすためには、従業員の衛生管理意識を高めることが不可欠です。
この意識を高めるために効果的なアプローチのひとつが、リスクや衛生管理の状態を「見える化」することです。
例えば、手洗い前後の手指や、洗浄前後の調理器具に付着している菌の状況の見える化です。これにより、リスクが具体的に確認できるようになり、従業員の衛生管理に対する意識が自然と高まっていきます。
見える化されたデータは、衛生管理の改善に必要なPDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルを回していくための基となり、これにより衛生管理の継続的な向上を図ります。
食品を取り扱う事業者にとって、従業員の衛生意識を高めることは、食中毒予防の最前線に立つ重要な戦略です。リスクの見える化によって、衛生管理の意識を根本から改善し、食中毒のリスクを最小限に抑えましょう。
食中毒の予防で大切なこと4.「検査機関を利用する」
飲食店や食品加工工場などの衛生管理を向上させるためには、積極的に外部の検査機関を利用しましょう。以下のようなメリットが期待できます。
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専門性の高い検査
外部検査機関は、食品安全と衛生に関する専門知識を持っています。これにより、食品が法的基準や業界基準を満たしているかを正確に評価することが可能です。 -
客観性の確保
内部検査では偏向や見落としが生じる可能性がありますが、外部機関による検査は客観的で公正です。これにより、消費者や規制当局からの信頼が向上します。 -
リスクの軽減
食品の安全性を確保することで、食中毒やその他の健康リスクを軽減することができます。また、万が一の事態に備えて、リスク管理と危機管理の体制を強化することが可能です。 -
教育とトレーニング(従業員の意識の向上)
外部検査機関は、衛生管理のベストプラクティスなトレーニングやアドバイスを提供します。これにより、従業員の意識とスキルが向上し、日々の衛生管理が改善されます。 -
ブランドイメージの向上
安全で衛生的な食品を提供することは、ブランドの信頼性を高めます。これは消費者の満足度を向上させ、長期的な顧客ロイヤルティの構築につながります。
外部検査機関の利用は、食品衛生管理の質を高め、様々なリスクを管理する効果的な方法といえるでしょう。
食中毒などの衛生管理に必要な主な検査
見える化により衛生管理を向上させる検査には、主に以下のようなものがあります。
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食品細菌検査
食品細菌検査は、食品の衛生状態や食中毒菌の有無を検査し、食品の安全性を確保するための重要な検査です。これにより、食中毒の原因物質を確認し、適切な対策を講じることが可能になります。 -
ふきとり検査
ふきとり検査は、食品やまな板、包丁などの調理器具、さらに従業員の手指などの衛生状態を見える化するための検査です。清潔な状態を保つことが食中毒予防に不可欠であり、ふきとり検査はその確認に役立ちます。 -
異物検査
異物検査は、食品中に混入した異物が何であるかを検査し、原因を究明することで信頼を回復するための検査です。異物混入は食品業界において信頼性の低下を招く重大な問題であり、早期発見と早期対応が重要になります。 -
検便検査
安全性を確認する検便検査を、定期的に実施することで衛生管理の意識向上にもつながります。また、症状のあらわれていない菌の保有者を発見し、食中毒の発生を未然に防ぐ役割も果たします。特に、ノロウイルスなどの感染症に対する早期対策に有効です。 -
賞味・消費期限検査
賞味・消費期限検査は、食品の賞味期限や消費期限を科学的な基準をもとに設定するための検査です。正確な期限設定は食品の品質と安全性を確保するために欠かせません。 -
成分検査査
成分検査は、食品の成分や栄養価を確認するための検査です。正確な成分情報は消費者に対して誠実な情報提供を行うために重要です。
衛生管理における検査の重要性は高まる一方で、適切な検査体制を整えることは自社の価値を向上させます。
まとめ
食中毒は、様々な原因物質によって引き起こされ、それぞれに特有の症状と潜伏期間があります。したがって、食中毒を予防するためには原因物質ごとに適した予防策を講じなければなりません。
特に衛生管理においては従業員の意識向上と、リスクの見える化が大切です。そのためには、客観的な評価とアドバイスを求めことが重要で、外部の検査機関やコンサルタントの利用を検討し、専門的なサポートを受けることも検討しましょう。
【参考/引用資料】
首相官邸/ノロウイルス(感染性胃腸炎・食中毒)対策
厚生労働省/自然毒のリスクプロファイル
厚生労働省/クドアによる食中毒について
厚生労働省/リステリアによる食中毒
厚生労働省/食中毒統計(令和5年(2023年)食中毒発生事例速報)
厚生労働省/毒キノコによる食中毒に注意しましょう
厚生労働省検疫所/カンピロバクターについて
厚生労働省検疫所/サルモネラ(チフス以外)について (ファクトシート)
国立感染症研究所/ウェルシュ菌感染症とは
国立感染症研究所/ボツリヌス菌とは
東京都保健医療局/ウェルシュ菌
東京都保健医療局/カンピロバクター・ジェジュニ/コリ
東京都保健医療局/セレウス菌
東京都保健医療局/ノロウイルス
東京都保健医療局/ボツリヌス菌
東京都保健医療局/リステリア・モノサイトゲネス
東京都保健医療局/食中毒を引き起こす微生物
東京都保健医療局/生鮮魚介類を介するものクドア・セプテンプンクタータ
東京都保健医療局/腸炎ビブリオ
新宿区ホームページ/アニサキス
新宿区ホームページ/サルモネラ属菌
新宿区ホームページ/黄色ブドウ球菌
新宿区ホームページ/腸管出血性大腸菌
新宿区ホームページ/ノロウイルス
中野区ホームページ/自然毒による食中毒
宇都宮市ホームページ/動物性自然毒について
前橋市ホームページ/ノロウイルス食中毒に注意しましょう!
新潟市ホームページ/黄色ブドウ球菌食中毒について
広島市ホームページ/ヒスタミン
福岡県保健環境研究所/化学物質による食中毒
妹尾小児科/腸炎ビブリオ