弁当による食中毒を予防する方法(事業者・家庭向け)
テイクアウトや仕出し弁当が原因食品となり食中毒を起こすことがあります。また、家庭で作った弁当でも同様に食中毒を起こすことがあります。弁当は、作ってから食べるまでの時間があるため、この間に食中毒菌が増殖するリスクが高まってしまいます。そこで、弁当の食中毒を予防するためには「調理後の適切な保存」が大きなポイントになります。また、あわせて手洗いなどの「調理前」や、加熱などの「調理中」の対策も予防のポイントになります。
そこで今回は、テイクアウトや仕出し弁当などを提供する事業者向けに、食中毒を予防するポイントを紹介します。また、当コラムは事業者だけではなく、家庭で作る弁当の食中毒対策でも十分に応用できる内容になっているため、ご家庭でもぜひ参考にしてください。
目次
テイクアウトや弁当が食中毒の原因食品になりやすい理由
テイクアウトや仕出し弁当などで起こる食中毒の原因と事例を次に紹介します。手軽に様々な料理を楽しむことができる弁当ですが、その裏側には、食中毒を引き起こすリスクが多く潜んでいます。
調理してから食べるまでの時間が長い
テイクアウトなどの弁当は持ち帰ってから食べるため、提供されてから食事までに時間がかかります。また、事前に調理されていたものを提供された場合は、さらに食事をするまでの時間が伸びるため、食中毒菌が繁殖する「時間」を与えてしまうことになります。そのため、食中毒の原因菌が活発に繁殖する温度帯に弁当を置いた場合は、さらに食中毒のリスクが高まります。
この点から、提供側の保存管理が重要になりますが、購入側にも同様の管理が求められるとともに、できるだけ早く食べることがリスクを下げるポイントになります。また、サラダなどの非加熱食材のリスクも高まるため、より一層の注意が求められます。
そこで、温度管理の徹底と速やかな消費が、食中毒予防のために欠かせない要素となります。特に、夏場や温度が高い環境では、食品の保存方法に更なる注意を払い、食中毒リスクを低減させるための対策を講じる必要があります。
大量調理で食中毒を起こした例(東京都の事例)
次に、「東京都保健医療局」のホームページで紹介されている事例を紹介します。ぜひ予防を講じる際の参考にしてください。
<事例>
- テイクアウトの弁当を食べた人、約70名が食後4時間から12時間の間で下痢、腹痛などの食中毒症状を発症した。
- 保健所の調査によれば、弁当の食品は、鶏肉の煮物、玉子焼き、サラダ、ごはんなどで、飲食店が調理し、店頭で予約客に渡されていた。
- 検査の結果、複数のおかず、患者、そして調理従事者のふん便から「ウエルシュ菌」が検出された。
- 食中毒菌を検出した鶏肉の煮物は、提供2日前に調理し、常温で2時間以上かけて冷やした後、冷蔵庫で冷やされた。
- 提供当日は常温に6時間以上置かれ、再加熱することもなく盛り付けられた。
- 調理器具の洗浄・消毒の不備や、調理品の保管状況の不備も、食中毒菌の付着、増殖の機会を与えたものと考えられた。
以上の事例から、テイクアウトでの弁当の提供では、以下のような対策が推奨されています。
- 手洗いを徹底し、盛り付けを行う際は食品に手が直接触れないように手袋を着用する。
- 前日の調理はやめ、やむを得ず前日調理をする場合は、深鍋などに入れたままの冷蔵庫での保管は避け、小分けにして十分放冷し、速やかに冷蔵保存する。
-
提供当日は、必ず提供直前に十分な加熱をする。
ウエルシュ菌は、熱に強い「芽胞」をつくるため、一度加熱してもゆっくり冷める再度増殖します。提供前の再加熱が重要です。 - テイクアウトの弁当は、提供後すぐに食べてもらうよう、口頭や弁当へのシール貼付などで伝えるようにする。
この事例からは、大量調理や作り置きのリスクが浮き彫りになりました。適切な保存と衛生管理が、安全な食品提供のためには不可欠であることを、あらためて認識する必要があります。
弁当など、食中毒の主な原因物質と症状(発症するまでの時間など)
事業所、または家庭で作る弁当で発生しやすい食中毒の原因物質と症状、潜伏期間などを紹介します。
ノロウイルスの特徴と予防のポイント
ノロウイルスによる食中毒はウイルス性食中毒の中でも圧倒的に多いことで知られています。その潜伏期間は24時間~48時間で、症状には吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、発熱などがあります。回復期間は通常3日以内で、流行期は冬場に多いという特徴があります。
原因食品は水やノロウイルスに汚染された食品で、特にカキを含む「二枚貝」が多く報告されています。厚生労働省の令和5年11月時点の速報値によると、ウイルスによる食中毒患者3,942名のうち、99%にあたる3,914名がノロウイルスによるものであると報告されています。
ノロウイルスは貝の体内で増殖できませんが、貝の生息域がノロウイルスに汚染されると体内に蓄積します。また、感染者の便やおう吐物に触れることで二次感染を起こすこともあります。ノロウイルスは微量でも感染を引き起こす可能性があるため、食品の取り扱いや衛生管理には細心の注意を払う必要があります。
特に冬場はノロウイルスの感染リスクが高まるため、食品の加熱調理や手洗い、食品の保管方法に注意することが予防のポイントとなります。これらの予防策を講じることで、ノロウイルスによる食中毒のリスクを大幅に減少させることができます。
カンピロバクターと予防のポイント
カンピロバクターは、潜伏期間が1日~7日間で、症状としては腹痛、下痢、発熱、吐き気などがあげられます。この菌の回復期間は3日~6日間です。鶏、豚、牛、ペット、野鳥などの動物の「消化管内」に広く生息しており、肉の生食、特に鶏肉が原因食材として多く報告されています(加熱不十分な肉も同様に報告されています)。
カンピロバクターは、潜伏期間が1日~7日間で、症状としては腹痛、下痢、発熱、吐き気などがあげられます。この菌の回復期間は3日~6日間です。鶏、豚、牛、ペット、野鳥などの動物の「消化管内」に広く生息しており、肉の生食、特に鶏肉が原因食材として多く報告されています(加熱不十分な肉も同様に報告されています)。
- 加熱不十分な食肉や臓器、または食肉などの生食を避ける。
- 生野菜などへの二次汚染を防ぐため、生肉などを切った包丁などの調理器具は使用後に洗浄する。
- カンピロバクターは熱と乾燥に弱いため「熱湯消毒」と洗浄後の「乾燥」を心がける。
- 生肉を取り扱った後は十分に手指を洗浄する。
- 相互汚染を防止するため生肉は専用の蓋付きの容器に入れるかラップをかける。
- 生肉を取り扱う調理台と完成した料理を置く調理台を離して設置する。
- 盛りつけ作業には、使い捨て手袋を使用する。
- 未殺菌の飲料水、野生動物の糞等で汚染された貯水槽水・井戸水・沢水を飲まない。必ず塩素消毒や煮沸消毒をする。
- ビルやマンションの貯水槽は周辺を清潔にし、野鳥などの糞が入らないよう衛生管理に注意する。
これらの予防策を実行することで、カンピロバクターによる食中毒のリスクを大幅に減らすことができます。
ウエルシュ菌と予防のポイント
ウエルシュ菌は、潜伏期間が6時間~18時間で、主な症状に腹痛や下痢などがあります。この菌の回復期間は1日~2日間です。ウエルシュ菌は人や動物の腸管、土壌、水中など自然界に広く生息しており、熱に強いため高温でも死滅しません。
家庭よりも、カレー、シチュー、スープなどの煮込み料理を前日に大量につくって保存している飲食店や給食施設での発生数の方が多いです。このような環境はウエルシュ菌にとって理想的な条件となります。
ウエルシュ菌の予防ポイントは以下の通りです。
- 前日の調理は避け、加熱調理したものはなるべく早く食べる。
- 一度に大量の食品を加熱調理したときは、菌の発育しやすい温度を長く保たないように注意する。
- やむをえず保管するときは、小分けしてから急激に冷却する。
これらの予防策は、ウエルシュ菌による食中毒を防ぐ上で極めて重要です。特に、大量調理や作り置きをする場合は、食品の急速な冷却と適切な保存方法が、食中毒発生のリスクを減らす鍵となります。
サルモネラ属菌と予防のポイント
サルモネラ属菌による食中毒は、潜伏期間が5時間~72時間で、症状には腹痛、下痢、おう吐、発熱などがあります。この菌の回復期間は2日~7日間です。サルモネラ属菌は、鶏、豚、牛などの動物の腸管に加え、河川や下水など自然界に広く生息しています。
非加熱の肉や魚類に加え、加熱が十分でないオムレツや玉子焼き、自家製マヨネーズなども原因食品として報告されています。
サルモネラ属菌の予防ポイントは以下の通りです。
- 卵や肉類を調理する際は、食品の中心部まで火が通るように十分加熱する。
- 卵は新鮮なものを購入し、購入後は冷蔵保管する。ヒビが入っている卵や賞味期限を過ぎた卵は生で食べない。
- 卵は料理に使う分だけ、直前に割って、すぐに調理する(割置きしない)。
- 食肉・卵などを取り扱った手指・調理器具は、十分に洗浄・消毒する。
黄色ブドウ球菌と予防のポイント
黄色ブドウ球菌による食中毒は、潜伏期間が1時間~5時間で、主な症状には激しいおう吐、腹痛などがあります。この菌の回復期間は1日~2日間です。黄色ブドウ球菌は手指の傷口、のど、鼻腔内などに生息しているため、手指から食品への汚染例が多く報告されています。
食品内で菌が増殖するときに食中毒の原因となる「エンテロトキシン」という毒素をつくります。この毒素は熱に強く、100℃で30分の加熱でも死滅しないため、加熱した食品でも食中毒を起こすことがあります。黄色ブドウ球菌がついた手でつくったおにぎりやサンドイッチなどが代表的な原因食品です。
黄色ブドウ球菌の予防ポイントは以下の通りです。
- 手指の洗浄や消毒を十分に行う。
- 手指に切り傷や化膿巣のある場合は、使い捨て手袋などを使い直接食品を触らない。
- 食品は、10℃以下で保存し、菌が増えるのを防ぐ。
腸管出血性大腸菌と予防のポイント
腸管出血性大腸菌による食中毒は、潜伏期間が3日~8日間で、激しい腹痛や、大量の血液をともなう下痢が主な症状となります。症状があらわれて数日から2週間以内に「溶血性尿毒症症候群(HUS)」を発症することがあるため注意が必要です。腸管出血性大腸菌の中でも「O157」は広く知られていますが、その他にも「O26」や「O111」などがあります。
腸管出血性大腸菌は「VT1」「VT2」という2種類、あるいはいずれか1種類の「ベロ毒素」を産生する大腸菌で、出血性の大腸炎を起こします。感染しても健康な成人は無症状あるいは下痢で終わることもありますが、小児や基礎疾患がある高齢者などは症状が出やすく「溶血性尿毒症症候群(HUS)」を引き起こすことがあるため、特に注意が必要です。
腸管出血性大腸菌の予防ポイントは以下の通りです。
- 生野菜などはよく洗い、食肉は中心部まで十分加熱(75℃1分以上)してから食べる。
- 冷蔵庫内の食品は早めに食べる。
- 調理済の食品が二次汚染しないよう調理器具は十分に洗い、できれば熱湯または塩素系消毒剤で消毒する。
- 調理や食事の前には必ず石けんで手を洗う。
- 水道管直結以外の水を飲用あるいは調理に使用する場合は、必ず年1回以上の水質検査を受け、飲用に適しているか否かを確認する。
- ビルなどの貯水槽の清掃・点検を定期的に行う。
- お腹が痛く下痢が続いたら医師の診察を受ける。
- 便に汚染された下着などの取扱いに注意する。
腸炎ビブリオと予防のポイント
腸炎ビブリオ菌は、潜伏期間が8~24時間で、主な症状には腹痛、下痢などがあり、場合によっては発熱、はき気、おう吐を起こすこともあります。回復期間は2日~5日間です。この菌は沿岸の海水や海泥に生息しており、水温が15℃以上になると活発になるため、5、6月から次第に増加し夏場に食中毒が多く発生します。魚介類の刺身やすし類が代表的な原因食品ですが、調理器具や手指などを介して二次汚染された食品でも食中毒が発生します。
腸炎ビブリオの予防のポイントは以下の通りです。
- 魚介類は、調理前に流水(水道水)で良く洗って菌を洗い流す。
- 魚介類に使った調理器具類は洗浄・消毒して二次汚染を防ぐ。
- 魚介類を調理したままのまな板で、野菜などを切らない(まな板を使い分ける)。
- 夏季の魚介類の生食は十分注意し、わずかな時間でも冷蔵庫でできれば4℃以下に保存する。
- 冷凍食品を解凍する際は専用の解凍庫や冷蔵庫内で行なう。
- 加熱調理する場合は中心部まで充分に加熱する(60℃で10分以上)。
セレウス菌と予防のポイント
セレウス菌は、土壌・水・ほこりなどの自然環境や農畜水産物など幅広く生息しています。「下痢型」と「おう吐型」の2つのタイプに分類され、潜在時間や症状もそれぞれ異なります。ほとんどが一両日中に回復します。
-
下痢型セレウス菌
・潜在時間…8時間~16時間。
・症状…腹痛、下痢など。
・弁当やプリンが主な原因食品。 -
おう吐型セレウス菌
・潜在時間…30分~6時間
・症状…吐き気、おう吐など。
・焼飯、ピラフ、焼きそば、スパゲッティが主な原因食品。
セレウス菌の予防のポイントは以下の通りです。
- 一度に大量の米飯やめん類を調理し、つくりおきしないこと。
- 穀類などが原料の食品は調理後に保温庫(65℃以上)で保温するか、小分けにして速やかに8℃以下で低温保存すること。
テイクアウトや仕出し弁当から食中毒を出さないポイント(事業者向け)
新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、テイクアウトや宅配弁当の需要が高まっています。それだけ食中毒のリスクも高まっていることから、予防には一層の努力が求められます。次からは、弁当などを提供する事業者に注意してもらいたいポイントを紹介します。奈良市のホームページが分かりやすく参考になるため、参考・引用して紹介します。
【参考/引用元】
奈良市ホームページ「【事業者向け】出前・持ち帰り/仕出し屋・弁当屋の食中毒予防について」
https://www.city.nara.lg.jp/site/coronavirus/71654.html
テイクアウトや出前で弁当を提供する際の注意点
テイクアウトや出前で弁当を提供する際、食品安全を確保するための注意点がいくつかあります。これらの注意点は、食中毒のリスクを最小限に抑え、安全な食品を提供するために重要です。
- 加熱調理、または冷蔵庫から取り出してから30分以内の提供を目安にします。この時間内に提供することで、食品が危険な温度帯に長時間留まることを避け、食中毒菌の増殖リスクを減少させます。
- 宅配サービスでお届けする場合は、30分以内に提供し、購入者へ提供後すぐに食べるよう促します。食品が安全な状態で消費されるよう努めましょう。
- 弁当をお客様に提供する際には「保存を目的とした商品ではないので、提供後すぐに食べてください」という旨を、口頭またはメモ、シールなどにより確実に伝えます。これにより、消費者が食品を適切なタイミングで消費することを促し、食中毒のリスクを減らします。
- 気温、湿度が高い時期は、生もの(サラダ、刺身等)の提供は控えます。これらの食品は、温度や湿度の変化に敏感で、容易に食中毒菌が増殖する可能性があります。
「調理前」に行う食中毒の予防策
食中毒を防ぐためには、調理を始める前の準備が重要です。以下は、調理前に行うべき予防策をまとめたものです。
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体調チェック
発熱、下痢、のどの痛み、せきなどの症状がないかチェックし、体調不良の場合は、調理に従事しないことが重要です。これは、病原体を食品にうつすリスクを減らすためです。 -
手洗いチェック
せっけんで十分にもみ洗いし、アルコール消毒をすることが必須です。手指に傷がある場合は、絆創膏で処置し使い捨て手袋をすることで、直接的な汚染を避けます。 -
メニューチェック
気温、湿度が高い時期は、生もの(サラダ、刺身など)の提供を避けることをお勧めします。 -
服装のチェック
マスク、衛生的な服装、専用の履物を使用することで、食品への不要な汚染を防ぎます。特に、公衆衛生の観点から、マスクの着用は調理時に飛沫を介した汚染を防ぐ上で効果的です。
「調理中」に行う食中毒の予防策
調理中の行動も、食中毒予防では重要です。以下にあげる予防策を実施することで、食品を安全に保ちましょう。
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二次汚染の防止
まな板、包丁は、肉、魚、野菜などの用途別に使い分け、それらを扱った都度に十分に洗浄・消毒することが重要です。これにより、異なる食材間での細菌の交差汚染を防ぐことができます。 -
衛生的な手洗い
トイレ後、盛付前、作業内容変更時、生肉や生魚などを扱った後、金銭を触った後、清掃後には手洗いをすることが必須です。適切な手洗いは、食中毒を防ぐ最も基本的な方法のひとつです。 -
食肉の加熱
鶏肉、ミンチ肉を使った料理(ハンバーグ、つくねなど)は中心部まで十分に加熱することが求められます。また、生または加熱不十分な食肉の提供を避けることで、食中毒のリスクを減らすこともできます。
「調理中」に行う食中毒の予防策
調理中の行動も、食中毒予防では重要です。以下にあげる予防策を実施することで、食品を安全に保ちましょう。
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加熱処理したものは直ちに冷却する
・小分けや流水、氷水などで、速やかに冷却できるように工夫します。
・冷却後は、速やかに冷蔵庫に保存します。 -
冷却温度の目安
・30分以内に20℃付近、または1時間以内に10℃付近に冷却します(大量調理施設衛生管理マニュアル)。
・2時間以内に21℃以下に、さらに4時間以内に5℃以下に冷却します(米国FDA フードコード2017)。 - 気温、湿度が高い時期は、サラダ、卵焼、切身のハムおよびソーセージ、生鮮魚介類の刺身などの提供は控えます。特に、生食用の野菜、果物は十分洗浄し、「次亜塩素酸ナトリウム」などで殺菌した後、流水で十分にすすぎ洗いをします。
- 盛付けは、衛生的な配膳台で、できる限り短い時間で行います。
- 弁当の主食と副食は、調理パンなどを除き、それぞれ別の容器に入れることが望ましいです。主食と副食を同一容器に入れる場合は、主食も放冷後に盛り付けます。
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検食を保存する
・同一内容の食品を同時に50食以上調理する飲食店営業では、調理済みの食品を食品ごとに50グラム以上ずつ清潔な容器に入れ、-20℃以下で2週間以上保存します。
・上記の条件に満たない場合であっても、調理済みの食品を食品ごとに50グラム以上ずつ清潔な容器に入れ、10℃以下で72時間以上保存するように努めます。 - 弁当は直射日光および高温多湿を避けて保存します。
- 弁当などの消費期限は、科学的・合理的な根拠に基づいて客観的に設定します。なお、弁当の消費期限については、必要に応じ「時刻」も記載します。
- 弁当などを低温で保存しない場合、一般的に2時間を超えると細菌の増殖が活発になるため、弁当などに入れる食品は、冷蔵保存下を出てから消費まで、最大でも2時間以内にします。
事業者が心がける「食中毒の予防で大切なこと」
弁当の提供に限らず、食中毒の予防対策では、効果的且つ網羅的な衛生管理が重要となります。そのためには「食中毒予防の3原則」を意識した対策を講じながら、従業員の衛生管理への意識を高めることが最も大切です。
また、この過程においては、属人的な偏向を生まないために客観的な評価やアドバイスが重要になります。正しい知識による対策を講じながら改善を繰り返していくプロセスを持続的に行っていくことが、事業者が心がけるべき「食中毒の予防で大切なこと」です。
食中毒の予防で大切なこと1.「食中毒予防の3原則を守る」
食中毒を予防するためには、細菌やウイルスが食品に付着し、体内へ侵入することを防ぐことが大切です。このためには「食中毒予防の3原則」を心がけます。
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食中毒予防の3原則「つけない」
「つけない」とは、手指や調理器具、汚染された食品から食中毒の原因物質やウイルスを食べ物に付けないようにすることです。
基本は徹底した手洗いです。特に、ノロウイルスのように少量でも感染を広げる可能性があるウイルスに対しては、従業員が正しい方法で手洗いを徹底することが重要です。
また、包丁やまな板などの調理器具の洗浄・消毒によって交差汚染や二次汚染を防ぐことも重要です。 -
食中毒予防の3原則「増やさない」
「増やさない」とは、食材の保存時に食中毒の原因物質を増殖させないようにすることです。食品や食材は、冷蔵庫や冷凍庫などを使って適切に保存します。 -
食中毒予防の3原則「やっつける」とは
「やっつける」とは、食品や食材の加熱処理で菌を死滅させることです。
例えば、ノロウイルスは熱に弱いため、食品の中心までしっかり熱が通るように、中心温度を85~90度以上にし、90秒間以上加熱することが大切です。
また、飲食店などで新たなメニューを考案する際は、調理時の中心温度を意識して開発するようにします。
これらの原則を守ることにより、食中毒のリスクを大幅に減らすことができます。従業員ひとりひとりの意識と行動が、食中毒予防においては非常に大切なのです。
食中毒の予防で大切なこと2.「衛生管理意識を高める」
食中毒の予防において、従業員の衛生管理意識を高めることは非常に重要です。
特にノロウイルスのように、食品取扱者を介して食品が汚染されるケースでは、従業員の衛生に対する意識と行動が食中毒予防の鍵となります。
そこで、従業員が普段から実践すべき衛生管理対策を紹介します。
- 下痢や嘔吐などの症状を確認し、確認した場合は業務に従事しません。これにより、感染の拡散を防ぐことができます。
- 手指のケガや傷を確認し、確認した場合は手袋などを着用します。これにより食品への細菌の移行を防ぎます。
- 常に清潔な作業着を着用します。レンタルユニフォームを利用して衛生管理を委託することもひとつの方法です。
- 菌が繁殖しやすい腕時計や指輪などの貴金属は着用しません。
- 正しい手洗いを徹底します。手洗いは食中毒予防の最も基本的で効果的な方法のひとつです。
食中毒の予防で大切なこと3.「リスクを見える化する」
食中毒の予防では、購入した食材の鮮度チェックや正しい保存方法など、様々な衛生管理に努めることが重要です。ただし、これらの努力を最大限に活かすためには、従業員の衛生管理意識を高めることが不可欠です。
この意識を高めるために効果的なアプローチのひとつが、リスクや衛生管理の状態を「見える化」することです。
例えば、手洗い前後の手指や、洗浄前後の調理器具に付着している菌の状況の見える化です。これにより、リスクが具体的に確認できるようになり、従業員の衛生管理に対する意識が自然と高まっていきます。
見える化されたデータは、衛生管理の改善に必要なPDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルを回していくための基となり、これにより衛生管理の継続的な向上を図ります。
食品を取り扱う事業者にとって、従業員の衛生意識を高めることは、食中毒予防の最前線に立つ重要な戦略です。リスクの見える化によって、衛生管理の意識を根本から改善し、食中毒のリスクを最小限に抑えましょう。
食中毒の予防で大切なこと4.「検査機関を利用する」
飲食店や食品加工工場などの衛生管理を向上させるためには、積極的に外部の検査機関を利用しましょう。以下のようなメリットが期待できます。
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専門性の高い検査
外部検査機関は、食品安全と衛生に関する専門知識を持っています。これにより、食品が法的基準や業界基準を満たしているかを正確に評価することが可能です。 -
客観性の確保
内部検査では偏向や見落としが生じる可能性がありますが、外部機関による検査は客観的で公正です。これにより、消費者や規制当局からの信頼が向上します。 -
リスクの軽減
食品の安全性を確保することで、食中毒やその他の健康リスクを軽減することができます。また、万が一の事態に備えて、リスク管理と危機管理の体制を強化することが可能です。 -
教育とトレーニング(従業員の意識の向上)
外部検査機関は、衛生管理のベストプラクティスなトレーニングやアドバイスを提供します。これにより、従業員の意識とスキルが向上し、日々の衛生管理が改善されます。 -
ブランドイメージの向上
安全で衛生的な食品を提供することは、ブランドの信頼性を高めます。これは消費者の満足度を向上させ、長期的な顧客ロイヤルティの構築につながります。
外部検査機関の利用は、食品衛生管理の質を高め、様々なリスクを管理する効果的な方法といえるでしょう。
食中毒などの衛生管理に必要な主な検査
見える化により衛生管理を向上させる検査には、主に以下のようなものがあります。
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食品細菌検査
食品細菌検査は、食品の衛生状態や食中毒菌の有無を検査し、食品の安全性を確保するための重要な検査です。これにより、食中毒の原因物質を確認し、適切な対策を講じることが可能になります。 -
ふきとり検査
ふきとり検査は、食品やまな板、包丁などの調理器具、さらに従業員の手指などの衛生状態を見える化するための検査です。清潔な状態を保つことが食中毒予防に不可欠であり、ふきとり検査はその確認に役立ちます。 -
異物検査
異物検査は、食品中に混入した異物が何であるかを検査し、原因を究明することで信頼を回復するための検査です。異物混入は食品業界において信頼性の低下を招く重大な問題であり、早期発見と早期対応が重要になります。 -
検便検査
安全性を確認する検便検査を、定期的に実施することで衛生管理の意識向上にもつながります。また、症状のあらわれていない菌の保有者を発見し、食中毒の発生を未然に防ぐ役割も果たします。特に、ノロウイルスなどの感染症に対する早期対策に有効です。 -
賞味・消費期限検査
賞味・消費期限検査は、食品の賞味期限や消費期限を科学的な根拠をもとに設定するための検査です。正確な期限設定は食品の品質と安全性を確保するために欠かせません。 -
成分検査
成分検査は、食品の成分や栄養価を確認するための検査です。正確な成分情報は消費者に対して誠実な情報提供を行うために重要です。
衛生管理における検査の重要性は高まる一方で、適切な検査体制を整えることは自社の価値を向上させるため、その分大きな利益をもたらします。
まとめ
テイクアウトの弁当は、食事までの時間が長いことで食中毒の繁殖リスクが高まります。発生時にはパンデミック的なリスクが懸念されることから、事業者の衛生管理に対する意識、または具体的な管理が強く求められます。この管理を実現するためには、日常的に正しい衛生管理を行い、リスクを見える化することで従業員の意識を高めることが最も大切です。
また、衛生管理に対する属人的な偏向を生まないためには、客観的な評価やアドバイスも重要になります。そこで、外部の検査機関やコンサルタントも積極的に利用しましょう。これらの措置を通じて、事業者は食中毒のリスクを最小限に抑え、消費者に安全な弁当を提供する責任を果たすことができます。
【参考/引用資料】
東京都保険医療局「テイクアウトされた弁当箱により発生した食中毒事例」
東京都保険医療局「食中毒を引き起こす微生物」
厚生労働省「食中毒統計令和5年(2023年)食中毒発生事例 速報」
東京都保険医療局「カンピロバクター・ジェジュニ/コリ」
厚生労働省検疫所「カンピロバクターについて」
東京都保険医療局「ウェルシュ菌」
国立感染症研究所「ウエルシュ菌感染症とは」
新宿区ホームページ「サルモネラ属菌」
厚生労働省検疫所「サルモネラ(チフス以外)について (ファクトシート)」
新宿区ホームページ「色ブドウ球菌」
新潟市「黄色ブドウ球菌食中毒について」
東京都保険医療局「腸管出血性大腸菌」
東京都保険医療局「腸炎ビブリオ」
妹尾小児科「腸炎ビブリオ」
東京都保険医療局「セレウス菌」
奈良市「【事業者向け】出前・持ち帰り仕出し屋・弁当屋の食中毒予防について」
前橋市「ノロウイルス食中毒に注意しましょう!」
首相官邸「ノロウイルス(感染性胃腸炎・食中毒)対策」